Department of Functionalized Natural Materials, The Institute of Scientific and Industrial Research, Osaka University 大阪大学 産業科学研究所 第2研究分門 自然材料機能化研究分野

Department of Functionalized Natural Materials, The Institute of Scientific and Industrial Research, Osaka University 大阪大学 産業科学研究所 第2研究分門 自然材料機能化研究分野

透明な紙の作り方

透明な紙の作り方 in 夏休みの自由研究

レシピはこちらにあります。
透明な紙の作り方2015(PDF 200kB)

これまでに、チャレンジして下さった方々の成果
武庫川女子高 2014夏小学生達with富山県立大千葉の中学生武庫川女子高2015夏大阪の小学6年生東京の小学3年生

以下、2012年に我が家(小学2年生・5歳・父の3人)で、トライした様子です。
R&Dレベル情報が必要な方は、下をお読み下さい。

野菜11

人参・ほうれん草・大根を買ってきました。
皮剥いて、茹でて、小さく刻んで、すり鉢ですり潰しました。

野菜12
何度もミキサーにかけて、何度もパンストで漉しました。(この写真、大根です)
パンストで漉せば漉すほど、微細な繊維がコップに入っていきます。
パンストの中に残ったものは捨てて、コップに入ったものを使用します。

野菜13

漉されたコップに入った大根汁を、鍋で少し煮詰めました。
その煮詰めた汁を金属板に塗って、ホットプレートで乾かしました。

野菜14

右上写真:緑がほうれん草(左)、白が大根(中央)、オレンジが人参(右)です。
左下写真:人参から作った透明な紙です。

はい、野菜から透明な紙のできあがり!!
このように、特殊な試薬・装置を使わなくても、ここまで透明な紙が家庭で作れます。
もっと透明な紙を作りたい方は、下を読み進んで下さい!

セルロースナノファイバーの製造方法

色々なグレードのセルロースナノファイバーがありますが、ここでは「透明な紙」を念頭において、ざっくり説明します。
**酵素処理法などもありますが、残念ながら、私は触ったことがないため不明です。**
**正確な情報は、各自、オリジナル論文で確認して下さい。**

大きく分けて、3種類の方法があります。
1. 太いナノファイバー(幅15nm~数μm) → 半透明な紙になります。
2. 細いナノファイバー(幅15nm)     → 透明な紙になります。
3. 超細いナノファイバー(幅4nm)    → 透明な紙になります。

ナノファイバー11
画用紙・濾紙・普通紙など、一般的に入手可能なパルプを機械的に解繊する方法です。
幅15nm~数μmのセルロース繊維が得られます。
ナノファイバー懸濁液は白色で、乾かすと「半透明な紙」になります。

これらのパルプ原料を用いると、処理回数や装置出力を増やしても、未解繊の太い繊維(幅15nm~数μm)が残りやすいです。
解繊装置の種類・出力は、あまり関係ありません。

ナノファイバー12
京大 阿部らが開発した方法です。
幅15nmのセルロースナノファイバーが得られます。
ナノファイバー懸濁液は半透明~透明で、乾かすと「透明な紙」になります。

木材チップを脱リグニン処理し、乾かすことなくウェットな状態で機械的に解繊処理します。
この方法は、解繊装置の種類・出力・処理回数によって、透明性が大きく異なります。

ナノファイバー13

東大 齋藤らが開発した方法です。
幅4nmのセルロースナノファイバーが得られます。
(これが限界です。これ以上、細いセルロースナノファイバーはありません。)
ナノファイバー懸濁液は半透明~透明で、乾かすと「透明な紙」になります。

木材パルプ(白色)へTEMPO酸化処理・CMC化処理など行い、化学変性パルプを作製します。
そして、軽微な機械的解繊処理を施すと、幅4nmのセルロースナノファイバーが得られます。
(機械的解繊処理後に、遠心分離・濾過などで粗大物の除去を行う場合もあり)
この方法は、化学変性処理条件によって、透明性が大きく異なります。
(装置依存性が少なく、変性処理レシピを入手すれば、実験可能です。)

透明な紙の作り方

セルロースナノファイバーから「透明な紙」を作製する方法を紹介します。
とても簡単です。
成膜方法によって、紙の透明性が悪化することはほとんどありません。
紙の透明性が悪い場合は、懸濁液に太い繊維が沢山混ざっています。

成膜11

パルプ繊維と水を混ぜた懸濁液を乾かすと、紙の完成です。
糊や接着剤を加えなくても、紙はできます。
そして、パルプ繊維は幅15μm以上と非常に太いため、乾いた紙は「白色不透明」です。

成膜12

透明な紙は、紙と同じ作り方です。
セルロースナノファイバーと水を混ぜた懸濁液を乾かすと、紙の完成です。
当然、糊や接着剤を加えなくても、紙はできます。
そして、セルロースナノファイバーは幅15nmと非常に細いため、乾いた紙は「無色透明」です。
なぜ、透明になるか?また今後、情報アップします。



© Department of Functionalized Natural Materials ISIR, Osaka University